農林水産ダイバーシティ連盟は、都会で働きながら農業事務を支援、あるいは地方で農家をやりながら企業のテレワークをするなどの様々な柔軟な働き方で活躍する人たちのことを、「テレノーカー」と名付け、活躍をサポートしています。
この記事では、「テレノーカー」に焦点を当て、その生活や仕事スタイルをご紹介します。
今回はWebマーケターの助川 富美恵さんにお話を伺いました。2023年8月に新卒で入社した会社をやめて、テレノーカーとしての活動を始めたばかりです。
助川さんの農業との関わり方やライフスタイルを通じて、兼業や農業への興味を持つ人々に向けたヒントを探りたいと思います。
ー荻間(インタビュアー):
現在のお仕事を教えていただけますでしょうか?
ー助川さん:
現在は、Webマーケティングの業界でフリーランスをしています。
フリーランスになるまでは、新卒で入社した会社で同じくWebマーケティングの仕事に従事し、2023年8月に独立しました。
ー荻間:
Webマーケティング以外にはどのような活動をされていますか?
ー助川さん:
農業関係の事業をしているわけではないですが、自治体のイベントや事業創出プログラムに参加して、地方ビジネスの支援をしています。事業創出プログラムに参加すると、観光だけではなく、第一次産業に関わることが多いです。
仕事以外では、農業体験に参加したり、知人とシェア畑をしながら農業に関わっています。
助川さんがテレノーカーになったきっかけ
ー荻間:
助川さんがWebマーケティング以外の分野に挑戦されたきっかけはなんでしょうか?
ー助川さん:
元々、旅行が趣味で海外でのバックパッキングや学生時代に石垣島でワーキングホリデーを経験し、地域社会に馴染むことが好きでした。そのため、地域を活かした仕事ができないかと模索していました。
その時に、知人が「能登ローカルシフトアカデミー」と言う石川県能登町主催の地域ビジネス創出プログラムに参加していることを知り、私は2期生で参加しました。
プログラムの前半は、オンライン講義が中心でしたが、後半では実際に能登町でのフィールドワークも行いました。能登町が、どういう地域なのか五感で感じること、とにかく能登町を楽しむことを徹底しました。
現地の人や能登に移住して活躍されている方とも話せて、「地域ビジネスでは、SNSやPRの人手は足りてないし、どうやっていけば良いか分からないことが多い」というお声をいただき、現在の仕事を地域を展開できる可能性に気付きました。
本業の仕事を続けながら、副業として関わることも考えました。しかし、副業として本業の傍ら関わるのではなく、しっかりフルコミットして、地域に焦点を当てた活動をしたいと思い、2023年8月に退職し、フリーランスとして独立しました。
ー荻間:
助川さんが農業に関わるようになったきっかけはなんですか?
ー助川さん:
北海道帯広市で行っていた農家へインターンへ参加したことです。主に大学生向けの農業実習としてのプログラムでしたが、知り合いの紹介をきっかけに参加しました。
農業に関わったのはこの時が初めてです。
ー荻間:初めて農業に関わって気づいたことはありますか?
ー助川さん:Webマーケティングと農業は異なる業界ですが、両者ともビジネスであることに気付きました。
農業に関わるまでは、単純に農作業をしているだけかと思っていました。しかし、農家の方と一緒に働いていると、しっかりプランを立ててお仕事されているのがわかりました。
例えば、この畑の面積にどれくらいの量のジャガイモを植えて、1個の単価がこれぐらいだったら、見込みの売上も出てきます。その見込み売上に対して自分達の人件費や設備の費用を踏まえながら価格設定をして、翌年の計画もされているお話を聞けました。
業界が変わると仕事のやり方も大きく変わるのかと思っていましたが、何事もビジネスなんだなと知り、このインターンで農業のおもしろさを知り、より地域を軸に働いてみたいと思うようになりました。
ー荻間:
フリーランスになった今は、どのような活動をしていますか?
ー助川さん:
今はまだ単発でちょこちょこ活動している段階ですが、農業を体験できる機会があれば、積極的に参加しています。
福島県の大熊町に1週間、イチゴの収穫の手伝いに行ったり、知り合いの田んぼの収穫に行って、田植え機をやらせてもらったりしました。
11月にはテレノーカー協会から募集があった長野県のキタイチ果樹園の収穫体験にも行きます。
最近は南相馬市にお仕事でいくことも増えました。南相馬市は今でも殿がいる珍しいところで、相馬野馬追という祭典をやっています。「面白そうだから一緒に行こうよ」って知り合いの方が誘ってくれたのがきっかけでしたが、いざ蓋を開けてみると、熱量は凄いし、地域の方々が1年かけて野馬追を盛り上げようとしているのがすごく伝わりました。
震災の影響もあり、一部地域が帰還困難区域になった地域でもあるため、人口が少なくなっていますが、地元の文化を生かして改めて町を一から作ろうとしている動きが盛んで、私もお仕事を手伝わせていただくようになりました。
南相馬のイベントでは、「殿ナイト!」というリアルイベントを東京・南相馬で行っている団体に関わらせていただいており、現地の農家さんにお邪魔して収穫を手伝い、参加者に収穫物を持ち帰ってもらったり、地域を駆け巡って地産の食材を集めて、東京から中華の料理人さんを呼んで餃子パーティーをしたりしました。
地域ビジネスに関わっていると、その地域の文化に触れるので、農業に関わることも非常に多いです。
2023年の8月にフリーランスなったばかりなので、まだテレノーカーとしてはひよっこですが、地域プログラムに携わりながら、今後も農業にも関わっていきます。
あとは仕事というわけではないですが、知り合いとシェア畑を借りて作物を育てています。
ー荻間:
シェア畑を初めて生活に変化はありましたでしょうか?
ー助川さん:
毎日が新しい発見ですね。
今やってるシェア畑が自分で育てる野菜を選ぶんじゃなくてオーナーさんが「この時期はこれが採れるからこれを育てて」って指定します。そのため初めて出会う野菜が多いです。以前はスーパーでメインの食材を選んでいましたが、今は収穫物が主体になり、副食材をスーパーで購入する生活になりました。
あとは野菜を育てる段階から知るので、野菜の特徴や旬についてより詳しくなりました。
最近はネギを育ててるんですけど、ネギの白いところはどう作られてるかっていうと、知らぬ間に下に伸びていくんじゃなくて、土を三角に盛って、土がかぶった部分が白くなるから、こまめに山を作って手入れをすることが大事なんだよって教えてくれました
だから去年は青い部分が多かったなど、細かい発見がありますね。
まずは始められるところから挑戦する
ー荻間:
農業をやったことない、農業体験をしたことない人に向けて、アドバイスをいただけますでしょうか?
ー助川さん:
会社員をしていた時から週末農業とか興味あるって声は聞いていました。
さくっと「やってみればいいじゃん」と思うんですね。
農業と聞くとハードル高く感じてしまう人が多いと思うのですが、今の自分で手軽に始められるところからやっていいんだよと思います。
まずはちょっと小さな一歩でも踏み出して欲しいです。
友達の畑や遊びに行くとか、知人の実家で畑やってるらしいからお邪魔してちょっとお手伝いするとか、特にゴールデンウィークは全国的に田植えのシーズンなので、そういう時期に農業体験に行くとかから始めるので良いと思います。
それでも難しいなら、庭のベランダに鉢植えでプランターやるとかでも全然いいと思うんです。軽く始めてみて、ハマったらステップアップしていくので良いと思います。
小さいことでも良いので始めないと勿体無いですからね。
ー荻間:
今後チャレンジしたいものはありますか?
ー助川さん:
フリーランスの仕事もやりつつ、とにかく農業を楽しんで行きたいです。
シェア畑も継続も続けたいです。農業インターンや地域ビジネスで、地域ごとの独自の特徴や土地の農業について学ぶことが私にとって魅力的です。
フリーランスになって、仕事の時間を自分で組み立てできるようになったので、農業のお手伝いサイトとか見て積極的に参加したいです。
フリーランスの仕事を活かしつつ、日本全国のいろんな農業をお手伝いをしたいです。
今回は日本全国を飛び回りながら、その土地の文化や農業に触れてきた助川さんにお話を伺いました。
農業に関わる際は、ハードルを高く感じず、今の自分に出来ることからやるという、実体験を交えたアドバイスをいただきました。
これからもテレノーカーとして活躍される方々にスポットを当て、様々な視点からのインタビューを通じて、その魅力と挑戦をお届けしていきます。次回の配信もお楽しみにお待ちください。